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インタビュー:パリの演劇学校に学ぶ

 野崎 夏世さん

「弱った時、自分を甘やかしてやれるのは自分だけ」

2002年4月号・・・野崎 夏世さん


Q.VTビザでフランスに来ようと思ったのはなぜですか。
A.フランスに初めて旅行したのは4年前の夏です。毎年7月にアヴィニョンで行われる演劇祭の見学に行き、2週間の滞在で30本の芝居を観ました。まず、そういうイベントが毎年続けられるくらい、フランスでは演劇が人々の日常生活に染み込んでいるという環境に驚かされました。それから、私には非常に大きな影響を受けた大学教授がいるのですが、彼は以前フランスに留学していて、パリと日本の演劇の天文学的な質の違いをいつも嘆いていました。でも、彼の話を聞くだけでは納得できないし、その天文学的な差異とは何なのかが分からない。もうこれは自分の目で確かめるしかないな、と。でもそのために、フランスの演劇環境をどの場所から捉えるべきなのか。大学か、演劇学校か、それとも劇場などでの研修でなのか。結局、もう行ってみるしかない、道が開ければラッキーだし、ダメならばそれまでだと、VTビザの取得に関してはかなりあいまいな展望でしたね。


Q.現在はどのような活動をされていますか。
A.パリのジャック・ルコック演劇学校というところに通っています。私は、アカデミックな考察ではなく、芝居をつくる現場にいたいので、大学ではなく、演劇学校を目指すことにしました。ジャック・ルコックの学校に通うことはかねてからの希望だったので、今、念願の環境に身を置いているわけです。

でも、入学の出願書類を提出する時には困りました。舞台関係者からの推薦状が必要だったんです。それを知ったのは、パリ到着後、初めて学校を訪ねたとき。提出期限が迫っていたし、出発前に挨拶にも行けなかった恩知らずな私が、いきなり国際電話をかけて、「今パリにいます。私の推薦状を英語かフランス語で書いて、1週間以内に送ってください」と頼める人はいなかった…。でもどうしても諦めたくなかったので、結局自分で書いてしまいました(笑)。

Q.そこまでしてその学校に入りたかった理由とはなんですか。
A.東京で初めてイギリスのカンパニーの芝居をみて、その空間創造力に驚かされました。そこの脚本・演出(時には俳優も)をしているマクバーニー氏が、ルコックの卒業生だと知ったのが、この学校を知ったきっかけです。その後、やはり東京でリュック・ボンディ演出の舞台を観た時に、前述の教授の言「天文学的な差異」の一端を感じたような気がして、彼について調べたところ、やはり彼もルコックの卒業生だったんです。二つの忘れられない舞台を見たときの、「どうやったらそんな空間、そんな芝居がつくれるの?」という単純な欲求が、ルコックという学校で共通していたので、ここに答えがあるに違いないと思っていました。授業は、テクニカルなものではなく、体と空間のダイナミズムをいかに創出できるのかがいつも最重要項目で、「リスクを負って、探せ」、これが常に私には重要なフレーズです。

Q.学校の授業の様子について教えてください。
A.月-金の9時から13時までが俳優のプロフェッショナル・コースで、その他に、セノグラフコース(舞台装飾などを学ぶ舞台美術学)を、火-金の夜に取っています。みんな自分の道を見つけるために必死なので、とても真面目です。演劇学校ですが、主に体の動きに重点をおいたセオリーに基づいて学んでいくので、テキストを使ったりはしません。自然界の生き物達やマルシェの人々などを観察して、その空間と等しいダイナミックさを劇場で提示する方法を模索するのが課題です。ものをよく見ることや、小さな動作にも理由があること、自分が演じるもの自体についてよく知ることの大切さや、空間での距離感の重要さ、適切なタイミング、呼吸する空間などについて、いつも考えています。

学生は、1クラス30人のうち半数がフランス人。あとは、イギリス、アメリカなどの英語圏、スペイン語圏の人達です。アジア人は私ひとりなので、珍しがられるという強みもありますが、やはりグループ創作での討論では、会話の速さや、ボキャブラリー的な問題で食い込んでいけなかったり、自分のアイデアをみんなに説得できなかったり、悔しい思いもたくさんしています。

Q.こちらの生活で大変だと思うことはありますか。
A.生まれて始めての一人暮らしなので、風邪をひいて寝込んだときは大変でしたね。パリに来て半年経ったというのに、その時初めてホームシックになりました。熱があるから学校を休んだ、だからといって、その日休んだことは取り返しがつかないし、その遅れを取り戻すのは、何倍もの時間がかかります。でも、フラフラした体と頭で授業に出るのは教授にも皆にも迷惑がかかる。故障のある体で出席するのは、非常に評価の下がる行為だと知りました。自己管理のできていない自分を情けなく思ったのはその時が初めてです。

そんな訳で精神的にも弱ってしまい、もう、フランス語を聞きたくもないと思いました。だから学校の友達には電話できないし、ラジオから流れるフランス語さえ嫌悪して、3日間、静寂の中過ごしたわけです。一人でいると、これは徹底的に自分を甘やかしてあげないとダメになるな、と感じて、好きなものを好きなだけ買い込んで食べたり、日本の家族に電話したり、知っている限りの日本の歌を歌ってみたりしました。

私が住んでいるのは北駅付近の7階屋根裏部屋(9m2)です。私の短いパリ症候群は、この狭く薄暗い部屋や、パリの冬の気候のせいもあったかもしれません。

普段、こちらでは日本料理をあまり食べないのですが、少し具合が良くなってから、自分で親子丼を作って食べた時は、なんだか自分で感激してしまいました。自分のエネルギーが弱っていると感じた時は、甘やかしてやれるのもまた自分しかいないんだなあ、と一人暮らしの基本を学びました。ついでに、一人ぼっちだなあと感じる時は、いろんな人のおかげで今ここにいられることを考えます。彼らのことを考えると、自分が1人だなんて考えは傲慢だったと気がつくし、エネルギーが出ます。

Q.今までの滞在で、特に印象的な出来事についてお聞かせください。
A.演劇学校では毎週、グループ創作の課題が出て、週末の金曜日に、各グループが教授と生徒たちの前で成果を発表することになっています。1年生2クラス合同での発表で、午後のクラスの学生や 2年生を合わせると、総勢80人以上の見学者の前で演じることになるので、毎回かなり緊張します。毎週、長い時間をかけて準備するのですが、議論が解決に向かわないまま本番ということも多く、消化不良で終わることもあります。まだ1学期のころですが、私の出した案が初めて採用され、最後まで不安を抱えながら発表した作品がありました。でも、終わった瞬間、学生達から、歓声があがったのです。日本で芝居をやっていても、歓声をもらえることはめったにないことだと思います。こちらの人たちは、いいと思ったものには惜しみないブラボーを送ってくれるので、その時は本当にうれしかったですね。今も、あの瞬間を求めて、毎週頑張っています。

Q.フランスでの生活で、何か新しい発見はありましたか。
A.友達の家でのパーティー、引越し後のお披露目パーティーなど、フランス人は、本当に人と一緒にいることが大好きなんだな、と思います。知ってる人も知らない人もとにかく一緒におしゃべりして時間を過ごすのですが、そういうことがとても素敵なことだと知りました。たとえ、その夜しか会わない人だとわかっていても、その時の会話がずっと印象に残ることもあります。その後の「おつきあい」というのを考えることなく、名刺や連絡先を交換することもせず、その瞬間だけを楽しく過ごす、という楽しみ方を知った気がします。

Q. 今までのVT滞在を振り返っていかがでしょうか。
A.演劇学校がはじまってからが、私のここでの生活の始まりだったと思います。入学時に100人程だった1年生の中から、3学期末の面接で、2年生に残れる30人が選ばれる、というサバイバルシステムなので、本当にいつまで続けられるか分かりません。とにかく今は、授業だけでなく、率直に批評し合える友達とのカフェでの会話もとても大切で、重要なアドバイスやヒントになります。彼らと同じ芝居を観て話をすることも刺激になるので、なるべく多くの舞台を一緒に観たい。それから、この夏、またアヴィニョンの演劇祭に行きたいですね。

でも、ルコック卒業後もフランスにとどまって演じていこうとは思っていません。ここで大いに盗んだものを日本の舞台で戦わせてみたい。それが今の生活の原動力です。

Q.これからVTビザでフランスに来る人たちへのアドバイスはありますか。
A.私は幸運にも念願の学校へ入れましたが、本当に情報不足、資金不足でした。今も、足りない語学力のために、自分自身がとても損をしているのが分かります。落ち込んで、喜んで、落ち込んで、本当に毎日面白いくらいの繰り返しです。でも、フランスへ何しに来たのか、ここで吸収したいものは何かを常にクリアにしておくことで、しり込みする自分を前へ押し出してやれると思います。


野崎さん、ご協力ありがとうございました。
取材でお会いした際に、「久しぶりの、日本語の夜です」とおっしゃっていましたが、自分ひとりで道を切り開いていけるたくましさを持った方だと感じました。
しかも、彼女のたくましさは、他人に力を与えられるもの。是非一度、野崎さんの舞台を拝見し、パワーを分けて頂きたいものです。

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テーマ:ワーキングホリデー - ジャンル:海外情報

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